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2015年11月30日 (月)

政府の「番組介入」後押しする意見広告と沈黙するマスコミ

 

 20151130日 上出 義樹

 安倍政権と一体となりTBSを攻撃する意見広告が登場

TBSのニュース番組『NEWS23』のメインキャスター・岸井成格(しげただ)

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やり玉に挙意見広告が波紋を広げている安倍晋三政権による「報道圧力」と一体となったこの意見広告、安保法制に反対する岸井氏発言を、政治的公平性などを定めた放送法第4条の「重大な違反行為」として非難する一方、同条項に対する従来の「総務大臣見解」にも異議を唱えている。そこで、1127日に開かれた高市早苗総務相の閣議後会見に私も参加し、意見広告がクレームをつけている「大臣見解」をあらためて問い質した。その結果わかったのは、政府が放送番組への介入を強める可能性があることと、表現の自由に関わる重大な問題であるにもかかわらず、会見で何も質問しなかった記者たちとマスコミ各社の腰が引けた姿勢である。

岸井キャスターを糾弾し総務大臣を側面から支援

「私達は、違法な報道を見逃しません」との威圧的な見出しが付いたこの意見広告は、政府寄りの知識人らによる「放送法遵守を求める視聴者の会」が今月中旬、産経と読売両紙に掲載。岸井氏が916日の放送で「メディアとしても(安保法案の)廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」と発言したことに対し、メインキャスターによる視聴者への「意見の押しつけ」と問題視している。

 一方、岸井氏の発言を糾弾する根拠となる放送法4条の「公平」条項については2007年に、「一つの番組ではなく当該放送事業者の番組全体を見て、全体としてバランスの取れたものであるかを判断することが必要」との総務大臣見解が示されている。このため、意見広告は「この見解に従うならTBSが放送法に違反しているとは言えないことになる」として、大臣見解自体の見直しを求めている。ただ、大臣見解への「異議」とは言っても、実際には、番組内容への介入がし易いように、タカ派の高市総務相を側面から支援しているようにも映る。

 放送法第4条の「公平」条項がさらに強化される懸念も

高市総務相への私の質問はこの「大臣見解」の変更の可能性などを尋ねたものである。同総務相は「(見解は)継続的なもの」としながらも「(第4条の解釈が)分かりにくいのではないかという指摘があることも認識している」「放送に関する検討会も設置しているので、分かりやすい判断ということも考えていいのではないかと思う」と答え、今後、番組内容への政府の介入が強まる可能性があることも示唆している。

 全国の放送事業者でつくる放送倫理・番組向上委員会(BPO)はこの116日、NHKの「クローズアップ現代」のやらせ問題に関する意見書で、政府(総務省)や自民党の番組介入に対して異例の批判を行ったばかりである。しかし、TBSを狙い撃ちにした今回の意見広告の問題を取り上げたのは、私の知る限り、東京新聞の1125日付朝刊特報面と、翌26日付けの日刊ゲンダイだけである。そして、総務相会見では新聞もテレビも現役の記者たちはこの問題で何も質問せず、沈黙するのみだった。

 大臣を追及しない記者会見に「自己規制」の影

 メディアの存亡にも関わる問題のはずだが、5つの全国紙とテレビの在京キー局がすべて系列化しているためか、テレビの記者だけでなく、新聞各紙の記者も総務省とはできるだけ良好な関係を保っておきたいのだろう。日本のマスコミの負の構造である。

「自分が下手な質問をして当局と気まずい関係になると会社や後任者に迷惑がかかる」「正直、自制心の方が先に立つ」。複数の記者から、そんな心もとない言葉も聞いた。まさに、「自己規制」(自主規制)の極みである。記者たちが束になって大臣をやり込める光景など、もはや望むべくもないということか。

 (かみで・よしき)北海道新聞社で東京支社政治経済部、シンガポール特派員、編集委員などを担当。現在フリーランス記者。上智大大学院博士課程(新聞学専攻)在学中。

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