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2015年12月 7日 (月)

知らぬ間に復活していた原発推進のテレビCM

                            2015127 上出 義樹

 

原発の割合が電力全体の20%台に回復することを意見広告でPR

2011年の東京電力福島第一原発事故の発生後、影をひそめていた原発推進のテレビCMが、着々と進む原発再稼働の動きに合わせるように、一部の民放テレビ局で復活している。

電力会社の業界団体である電気事業連合会(電事連)が経済産業省のエネルギー基本計画をもとに、2030年には原発が電力全体の22%にまで回復する電源構成比率の目標に対し国民の理解を求める意見広告である。私は1110日(火)の午後10時前後の時間帯にたまたまフジテレビでこのCMを目にし、「ウソでしょう」「いつの間に福島原発事故の前に戻ってしまったの」と、一瞬わが目を疑った。

 

フジテレビとテレビ東京でこの秋から放映

そこで在京テレビ各社の広報に電話やメールで問い合わせしたところ、フジのほかテレビ東京でも同様の意見広告を放映し、日本テレビ、テレビ朝日、TBS3局は扱っていないことがわかった。

このうち、フジテレビ広報部からメールで寄せられた回答は、「放送基準や社内規定にも抵触しないと判断した」と、このCMを受けた理由を説明しているが、広告を受け入れた社内のプロセスや、いつからどのくらいの頻度で放送しているかは、広告主との個別の契約内容であることなどを理由に回答していない。一方、原発CMに対し視聴者からの賛否の反応やメディアの取材は現段階では全くないという。

 さらに11月末、電事連の広報担当者が電話取材に応じた。それによると、原発意見広告は9月中旬から始めたが、新聞には現段階で掲載を申し込んでいないという。ただ。今後の意見広告の拡大方針などについては具体的な説明がなかった。

 

原発再稼働と歩調を合わせたテレビCMを問題視しないメディア

大手メディアなどの各種世論調査では一貫して原発再稼働に批判的な回答が多数を占めているが、それに抗する形で今年8月に九州電力の川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働し、約2年間続いた全国の「稼働原発ゼロ」状態に終止符を打った。今後も次々と再稼働する原発が控えるなかで、原発推進のテレビCMの復活は、明らかに現実の原発再稼働と軌を一にした動きと言える。

原発再稼働に批判的な日本テレビの記者からは「うちは(原発推進の)読売新聞系列のテレビ局だから原発広告を受け入れるかもしれない」との懸念の声も聞いた。あるいは原発再稼働推進の論調を展開する全国紙などでも、同種の意見広告が復活するかもしれない。

ところが、私が知る限り、原発に批判的な新聞を含め、メディアがこの重要な問題を大きく取り上げる気配がみられないのは一体どうしたことか。福島原発事故で思い知らされた「安全神話」と一体の原発広告の復活に対しては、きちんとした国民的な議論が必要ではないのか。 

 

(かみで・よしき)北海道新聞社で東京支社政治経済部、シンガポール特派員、編集委員などを担当。現在フリーランス記者。上智大大学院博士後期課程(新聞学専攻)在学中。

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