« 軽減税率の適用で新聞不信が渦巻くネットメディア | トップページ | 甘利氏辞任会見でも露呈したマスコミ記者の及び腰 »

2016年1月 6日 (水)

植民地支配の反省がない慰安婦問題の日韓「政治決着」

                                        201616 日 上出 義樹

昨年末に両国外相があわただしく会談

岸田文雄外相と韓国の尹炳世(ユン・ピョンセ)外相が、年の瀬の1228日にソウルであわただしく会談し、慰安婦問題で妥結した。日本は「責任を痛感」し、安倍晋三首相が「心からのおわび」を表明して、元慰安婦を支援する新基金に約10億円を拠出。韓国は、慰安婦を象徴する日本大使館前の少女像の撤去に努力する。そして、両国はこの合意が「最終的かつ不可逆的な解決」であることを確認した。めでたし、めでたし…。


戦後
70年談話と同じく安倍首相の「おわび」はまやかし

しかし、何かおかしくないか。たとえば、読売新聞は翌日の社説で「韓国は『不可逆的解決』を守れ」と、たたみかけたが、岸田外相が発表した安倍首相の「おわび」には、慰安婦問題と切り離せない日本の「植民地支配」に全く触れていない。

年明けの14日に開かれた岸田外相の閣議後会見。私が「『おわび』には植民地支配のことも含まれるのか」と質すと、外相は「従来から歴代内閣において示している気持ち、安倍総理が示してこられた気持ち、これを踏まえたものであると考えております」と、案の定、抽象的な表現で問題をすり替えた。自らの言葉では「植民地支配」や「侵略」をついに語らなかった戦後70年の首相談話と同じパターンである。

 

加害者が被害者に条件をつける上から目線の合意

日本のマスコミが総じて今回の日韓「政治決着」を肯定的に報じて中で、日刊ゲンダイは昨年1228日付電子版で「(日本側は)誠意も示さず…日韓外相会談の目に余る“上から目線”外交」と厳しく批判。「加害者が被害者にさまざまな要求をして、合意に条件をつけている。これはおかしなこと。日本側は、韓国サイドがゴールポストを動かしている、大統領が代わるたびに歴史問題を蒸し返していると主張するが、積み上げてきた歴史認識を日本側の閣僚がひっくり返すような言動をするから、韓国も反応せざるを得ないという側面もある」「自民党内にはすでに歴史問題の勉強会が始まっていて、歴史修正の動きがある。今後、靖国神社へ行く閣僚も出てくるでしょう。そうなれば、韓国も黙っていられなくなる」との辺真一コリア・レポート編集長のコメントを載せている。

 

靖国派の閣僚は強気に参拝継続の意向示す

一方、岸田外相と同じく1月4日に行った高市早苗総務相の記者会見では、「大臣は、よく靖国参拝をされている。『不可逆的な解決』には、閣僚が靖国参拝とか歴史認識の問題などで、韓国側をいたずらに刺激しないことも含まれるのではないか」との趣旨の質問をした。しかし、高市総務相からは「靖国参拝について、(外相会談で)何か問題提起があったということは伺っておりません」とこちらも、木で鼻をくくるような言葉が返ってきた。コリア・レポート編集長が心配するとおり、これからも、慰安婦問題には関係なく、靖国参拝は続けるという強気な意思表示と読み取れた。

 
新聞が今回の政治決着に厳しく切り込まないのは軽減税率適用も影響?

一方、歴史認識問題などで安倍政権に批判的な朝日などの全国紙も、「植民地支配」への反省を棚上げした今回の首相の「おわび」などには、なぜか厳しく切り込んでいない。もし、政府与党が昨年末の税制大綱に国民不在の形でもぐりこませた新聞代の消費税軽減税率適用が、新聞業界への懐柔策として早速影響しているとしたら、何をか言わんやである。

 (かみで・よしき)北海道新聞社で東京支社政治経済部、シンガポール特派員、編集委員などを担当。現在フリーランス記者。上智大大学院博士後期課程(新聞学専攻)在学中。

« 軽減税率の適用で新聞不信が渦巻くネットメディア | トップページ | 甘利氏辞任会見でも露呈したマスコミ記者の及び腰 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 植民地支配の反省がない慰安婦問題の日韓「政治決着」:

« 軽減税率の適用で新聞不信が渦巻くネットメディア | トップページ | 甘利氏辞任会見でも露呈したマスコミ記者の及び腰 »