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2016年2月15日 (月)

止まらない高市総務相の放送事業者「恫喝」発言

 2016215  上出 義樹

 政治的な偏向報道に対し、「電波停止」などの行政処分の可能性があることを繰り返す高市早苗総務相の放送事業者「恫喝」発言が止まらない。212日に開かれた高市氏の閣議後会見では、私を含め複数の記者が、一連の問題発言の疑問点などを質した。

高市氏は、他の閣僚からも「民主主義とメディアの関係がおかしくなる」と、同氏の威圧的な言動をたしなめるような発言があったことに対する感想を聞かれて、「大変心外」と、気色ばんで反論。その一方で、同法4条の政治的公平性の規定は「最悪のケース」や「公益に反すること」に対応するための「法的な備え」であることを強調するなど、大臣権限を振りかざしながら、放送局ににらみを効かせることを忘れなかった。

 「表現の自由」は棚上げし「政治的公平性」だけを強調

おさらいになるが、放送法は1条で「表現の自由」や「民主主義の発達に資する」ことを明確にうたっている。同法4条の「政治的に公平であること」や「公安及び善良な風俗を害しない」などの条項は、放送局が努力目標とすべき「倫理規範」であり、法的権限はないと解釈するのが、憲法やメディアの研究者の間では通説である。大臣(政府)に偏向報道の判断をする権限を与えるのは同法第1条や、表現の自由を保障する憲法21条などに反するという理由からである。これに対し高市氏や安倍晋三首相は、同法第4条の「公平」条項などは単なる「倫理規範」ではなくあくまで「法規範」であり、総務大臣に判断の権限があることを国会答弁や記者会見などで再三強調している。

  記者会見では開き直りの説明に終始

高市氏の12日の会見で、私はまず、「新聞は原発再稼働や安保法制、改憲問題などでそれぞれ賛否を明確にして報道している。もし、テレビ局が同じような放送をすると偏向番組となるのか」と、新聞と比較する形で政治的公平性の解釈について質問した。

これに対し高市氏は、「放送は有限希少な電波を使う点で、活字媒体とは違った法体系になっている」と一般論を展開。「新聞各紙に載ったことをテレビ局が毎日のように、こんなことが出ていますよと紹介する番組がある。それは、何も問題がない」などと、だれが考えても偏向とは言えない事例を挙げ、私の質問の的を外ずしながら、放送法の関連条項などを長々と説明した。「これまで放送法4条違反で『命令』(行政処分)をした事例はない」と、しっかり付け加えるなど、開き直りの説明に終始した。

 大臣の権限を振りかざす姿勢ますます露わに

さらに私は、同じ閣僚でも石破茂・地方創生相が29日の記者会見で「気に入らないから統制するとかすると、民主主義とメディアの関係がおかしくなる」と、大臣権限の行使に慎重な発言をしていることへの感想を問うた。

高市氏は「大変心外。私は『気に入らないから統制する』と申し上げたことは一度もないし、あってはならない」と語気を強めて反論。「私たち閣僚や国会議員には憲法遵守義務がある」と述べ、憲法第21条の「表現の自由」を口にした。そこまではよかったが、「憲法が保障する自由、権利は公共の福祉のために用いるべきことも規定されている」「たびたび、『高市大臣がまた電波の停止に言及』といったようなことが報道されているが、現存する法律(放送法や電波法)を現職閣僚が否定するわけにはいかない」「答弁するのは当然のこと」などと、大臣の権限を振りかざす姿勢をますます露わにした。

 自らのブログでも「法的な備え」をアピール

私の質問に関連して朝日新聞の記者は、高市氏が発信するブログの内容を基に、一つの番組だけでも同法4条に抵触する「最悪のケース」などについて問い質している。

放送が「政治的に公平」かどうかは一つ一つの番組ではなく、放送局の番組全体から判断するというのが従来の政府見解だが、高市氏は極端な偏向が見られるなど、一つの番組だけでも行政処分の対象になり得るケースを、211日付の自身のブログで示している。

同氏のブログは、放送事業者は地方の」ケーブルテレビ局や小規模なラジオ局を含め多様であり、「万一のリスクに対する法的な備えは必要」と説明。一つの番組でも行政処分の対象になる「極端なケース」として、①「免許人(放送事業者)等が、テロリスト集団が発信する思想に賛同し、テロへの参加を呼び掛ける番組を流し続けた場合には、『公安及び善良な風俗を害しないこと』に抵触する可能性がある」②「免許人等が地方選挙の候補者になろうと考え、選挙に近接した期間や選挙期間中に自分の宣伝番組のみを流し続けた場合には、『政治的に公平であること』に抵触する可能性がある」-との想定事例を挙げている。

朝日の記者の質問に対し高市氏は、「ないかもしれないが、将来起こるかもしれないリスクへの法的な備えをする場合はある」「最悪のケースが万が一起きたら、それに対応ができないということがあっては、国民の安全や公益に反することになる。起きないことを期待するが、法的な備えは必要」と述べ、放送法4条の規定を「法的規範」と力説する。

  高市氏の答弁を追認する政府統一見解も

総務省放送政策課によると、「命令」などの行政処分ではないが、放送法第4条に基づいて、要請ベースの行政指導の対象となった事例が過去に、①衆院選期間中の2003114日にテレビ朝日が「ニュースステーション」で16分間にわたり民主党の閣僚名簿などを紹介②2004320日にテレビ朝日系列の山形テレビが自民党の広報番組だけを、85分間にわたり放送-した2例だけある。いずれも小泉純一郎政権下で総務大臣は麻生太郎現副首相が担当し、情報通信局長名で「厳重注意」の指導を行っている。

高市氏は、行政処分の発動は「極端なケース」に限られることをしきりに強調しているが、この12日には放送法4条について「一つ一つの番組を見て、全体の判断をする」と、高市氏の答弁を追認する政府統一見解が示された。

 当の放送事業者はやはり萎縮?

こうした安倍政権の一連の言動に対し、民放労連のほか、報道関係者や研究者、市民らでつくる「日本ジャーナリスト会議」や「放送を語る会」などから、「表現の自由に対する許しがたい攻撃」などとして、抗議の声明や高市総務相の辞任要求が相次いで出されている。そんな中で、大手テレビ局の経営陣をはじめ当の放送事業者は何の行動も起こしていない。まさに、総務大臣の「恫喝」が効いている証と言えよう。

 (かみで・よしき)北海道新聞社で東京支社政治経済部、シンガポール特派員、編集委員などを担当。現在フリーランス記者。上智大大学院博士後期課程(新聞学専攻)在学中。

 

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