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2016年5月 9日 (月)

トランプ氏の過激な発言があぶり出す米軍への「思いやり」予算

                                 201659日  上出 義樹

 

「日本は在日米軍の経費を全額負担せよ」

あれよあれよという間に、今秋の米大統領選で共和党の候補になることを確定させた実業家ドナルド・トランプ氏の日本に関する過激な演説が、日米安保条約の「勘どころ」をあぶり出している。「アメリカから守ってもらっている日本は、在日米軍の駐留経費を全額負担すべきだ」。同氏は平然とそんな発言を繰り返し、今のところ発言の撤回はない。

 

石破地方創生相の反論は日本の気前良さを強調

たまりかねたかのように石破茂地方創生担当相が訪問先のワシントンで56日、「日米安保条約をもう一度よく読んでほしい」とトランプ氏にクギを刺した。毎日新聞などによると、石破氏は、①日本は米国の他の同盟国よりも多くの駐留経費を負担している②日本に米軍基地があることで地域の平和と安定に貢献③米国の国益にも寄与している-ことなどを列挙している。しかし、こうしたトランプ氏への石破氏の反論は本来、日本が払う必要のない在日米軍へのいわゆる「思いやり」予算が他の同盟国より多いことを、主要閣僚自らの言葉で強調する結果になった。

 

201620 年の5年間だけで約1兆円にも

「思いやり」予算は1978年、当時の金丸信防衛庁長官が、日米安保条約と一体の日米地位協定などにも日本側の負担が定められていない基地従業員の人件費の一部62億円を「思いやりを持って対処すべき問題」として支出したのが始まり。その後、施設整備費や光熱費なども盛り込まれ、現在は5年ごとに予算額を見直している。2011-15年度は年平均1866億円を支出。日本政府は2016〜20年度分の減額を求めたが、米側は拒否し逆に総額130億円増の年額1893億円で決着した。この5年分の「思いやり」予算だけで約1兆円(9465億円) にのぼる。

 

基地での快適な生活のため米兵1人当たり1500万円の税金投入

基地内の住宅から、学校、教会、ゴルフ場、ファストフード店などに至るまで、米兵やその家族が快適に生活するためのさまざまな施設が日本人の税金で整備され、地位協定などで定められた日本側の施設負担額を含めると米兵1人当たり1500万円にも上る。米国の他の同盟国からは「日本は群を抜いて気前のよい国」との揶揄も聞かれる。

 

「思いやり」の言葉を避ける及び腰の大手メディア 

安倍晋三政権に対して及び腰の姿勢が目に付く日本の大手メディアの一部は最近、「思いやり」予算の言葉を極力使わず、政府の要望を受けて、無味乾燥な「在日米軍駐留経費負担」などの言葉に置き換える傾向が強い。しかし今回、トランプ氏の一連の過激発言が皮肉にもその「思いやり」予算を浮き上がらせる形になった。 トランプ氏が大統領になる可能性を予測するのは難しいが、日本がまるで米国の属国のような日米同盟のさまざまな問題点には、新聞もテレビもしっかりと目を向けてほしい。

 

(かみで・よしき)北海道新聞社でシンガポール特派員、編集委員などを担当。現在フリーランス記者。上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ。

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