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2016年7月25日 (月)

メディアが報じない原子力規制委の「言論封じ」問題

                                         2016725 上出 義樹

 

公的な記者会見とは、国民に対し説明責任を負う政府機関のトップらと、国民への報道責任を担うメディアが対等の関係で質疑応答する場であると、私は承知している。ところが、私も参加した720日の原子力規制委員会の定例会見で田中俊一委員長は通信社の記者に、質問内容に事実と違う表現があるとして発言の撤回を求める一幕があった。

 

前委員長代理の島崎氏が大飯原発の耐震性の計算に異議

同日の会見では、「審査が厳し過ぎる」と電力会社などから罷免要求も出る中で2年前まで同規制委の委員長代理を務めていた地震学者の島崎邦彦氏が、原発再稼働の安全審査の重要項目である耐震性に関連し、関西電力が使った大飯原発の基準値(基準地震動)の計算方法に「過小評価の疑いがある」と、異議を唱えている問題について質問が集中した。

 

会見室の使用拒否を批判した共同通信記者に発言撤回を要求

その会見の後半で共同通信の記者が、前日の719日に島崎氏が同規制委の施設内で記者会見を開こうとした際、規制委が会見室の使用を拒否したことを問題視。「一民間人(島崎氏のこと)の記者会見の開催を結果的に政府機関が妨害したということにもつながると思うが、いかがか」と質問した。これに対し、田中委員長は「(島崎氏が外の施設を使い)自分でやる分にはいいですよ、と申し上げている。何が妨害なのか」と気色ばんで反論し、「妨害」発言の撤回を求めた。しかし、記者が発言の撤回を拒否したため、規制委はわざわざ共同通信社に対し、記者への注意喚起の申し入れを行っている。

 

繰り返されるメディアへの威圧的な対応

2012年秋に発足した原子力規制委はこれまでも、「容認できない誤報」の掲載を理由に複数の全国紙に、記者会見参加禁止などの「処分」を科している。今回は記者会見での発言の撤回を求めるケースだが、メディアへの威圧的な対応という点では共通している。

税金で運用される公共スペースにも関わらず、庁舎管理権を根拠に特定の記者会見を開かせない問題を巡っては、他省庁を含め強い批判が聞かれる。その核心を突く発言を撤回せよ、と委員長に強面の顔を見せられては、他の記者も今後、質問の内容を自己規制しかねない。その証拠にどのメディアもこの一件を報じていない。私には、看過できない政府機関の「言論封じ」と映るが、こんな記事を書く私にもお咎めがあるかもしれない。

 

(かみで・よしき)北海道新聞社でシンガポール特派員、編集委員などを担当。現在フリーランス記者。上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ。

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