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2016年11月11日 (金)

米大統領選に見る既存メディアの敗北

20161111日  上出 義樹

 

ドナルド・トランプ氏が勝利した米大統領選は、社会科の教科書的に表現するなら、格差や貧困の拡大、白人を中心とした中間層の没落など、グローバル資本主義の行き詰まりと、それに効果的な手を打てない既存の政治への人々の不信を反映した結果と言えるだろう。こうしたアメリカ社会の深刻な矛盾とともに、今回の米大統領選がもう一つ、明確に示したものがある。それは、新聞やテレビなど米国の既存メディアもまた、トランプ氏に敗北したという冷厳な現実である。

 

 トランプ氏は有力紙や大手テレビ局を敵視

日本のメディア批評誌などによると、トランプ陣営は選挙期間中、ヒラリー・クリントン氏に肩入れするニューヨーク・タイムズなどの有力紙や、CNNなど大手テレビ局を敵視し、トランプ氏の集会を取材する主流メディアの記者やカメラマンらに、何千人もの集会参加者が立ち上がってブーイングを浴びせる光景が恒例行事化していたという。

 

クリントン氏支持55紙に対しトランプ氏支持は1紙だけ

米国の主要な新聞のうち、共和党寄りの新聞を含め55紙がクリントン氏への支持を表明したのに対し、トランプ氏支持はわずか1紙だったとも言われる。横並び報道は日本だけでなかったようだ。同氏は彼らを「不誠実」と非難し、取材を拒否されたメディアもある。

 

新たな言論規制や差別の拡大などが心配

気になるのは、トランプ氏の支持者の間で高まったメディア不信が選挙後、米国全体のメディア離れを加速させ、新たな言論規制や差別拡大などの空気を醸成しかねないことである。この問題をあまり報じない日本の新聞やテレビも含め、民主主義社会におけるメディアの正念場かもしれない。

 

(かみで・よしき)北海道新聞社でシンガポール特派員、編集委員などを担当。現在フリーランス記者。上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ。

 

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