トランプ氏にノーと言えない日本政府と及び腰の報道
2017年12月11日 上出 義樹
世界の反発を買ったエルサレム「首都」宣言
「何でもあり」のトランプ米大統領だが、エルサレムをイスラエルの「首都」と一方的に宣言したニュースには、世界が驚かされた。国連安保理事会は9日(日本時間)、緊急会合を開催。各国の代表から米国への厳しい批判や反対論が飛び交った。欧州諸国がストレートに「ノー」を表明したのに対し、日本は盟主の米国に配慮。閣議後の閣僚会見などでも、中東情勢への「懸念」を示すのが精いっぱいだった。そんな安倍政権の対応を批判する報道も、歯切れが悪かった。
盟主には「反対」できない対米追随外交
報道によると、安保理事会で日本の別所浩郎国連大使は、「中東和平の環境悪化が心配」と述べると同時に、トランプ氏が中東和平に強く関与したことへの謝意を示すなど、対米追随の姿勢を強くにじませた。8日の閣議後会見でも河野太郎外相や世耕弘成経産相から中東情勢の悪化や日本への影響を危惧する発言は聞かれたが、どの閣僚もトランプ氏を直接批判する言葉は口にしていない。
イエスマンの安倍政権を厳しく批判しないメディア
一方、8日の在京各紙は、米国の今回の「首都」宣言を、「無分別な決定」(朝日・社説)、「無謀な判断」(産経・主張)などと、こぞって批判。しかし、その米政府に安倍政権が「ノー」と言えないことを厳しく指摘する記事は、ほとんど見当たらない。それを、ちゃんと報じたのは、私の知る限りTBSの10日のニュース番組「サンデーモーニング」くらいだろうか。いつもの繰り返しになるが、日本のメディアは、報道の自己規制が過ぎる。
(かみで・よしき)北海道新聞社で編集委員などを担当。現在フリーランス記者。上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ。
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