「日の丸」で魅せた産経の”愛国”五輪報道
2018年2月14日 上出義樹
平昌冬季五輪は4日目で初めて日本人選手がメダルを獲得。在京各紙の13日付朝刊1面は、日経を除く5紙が、ジャンプ女子で銅メダルを取った高梨沙羅選手やスピードスケート女子1500㍍で銀メダルに輝いた高木美帆選手らの写真を大きく扱っている。
1紙だけ高木選手が国旗をかざす写真掲載
その中で産経だけは、高木選手が日の丸の旗を頭上にかざす写真を掲載した。これはAP通信が配信したものだが、他紙には日の丸の写真はない。いかにも右派メディアの産経らしい紙面である。私もテレビ観戦で、日本人選手に熱い声援を送る一人だが、国同士が競い合う五輪は、とかく愛国心と結び付きやすい。為政者や右派の団体などがナショナリズムを煽るのに、もってこいのイベントでもある
ジャーナリズムが国家主義を煽ってよいのか
産経は聞く耳を持たないだろうが、権力監視の使命や公正な報道が求められるジャーナリズムが、国家主義を「煽る」側に立ってよいものなのか。今さら言うまでもなく、第2次大戦中は軍部の言いなりとなり、国民に戦争の真実を伝えなかった翼賛報道の反省と教訓が、戦後の新聞の出発になっている。
テレビを含め過熱報道はいただけない
平昌五輪は、日本選手の「金」が期待される後半戦に入る。日本で応援する人々の熱狂と興奮に押され、メディアはテレビも含めた横並びの過熱報道に走る傾向がある。同時に、「愛国心」も頭をもたげやすい。状況によっては、日の丸の写真をそれなりの扱いで使うことはあるだろうが、日本人選手の活躍ぶりなどをしっかり伝えつつも、ジャーナリズムとしての冷静で公正な報道姿勢が問われていることを忘れてはならない。
(かみで・よしき)北海道新聞社で編集委員などを担当。現在フリーランス記者。上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ。
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